高齢者の感染症

2017/03/06
高齢者の感染症でよくみられるのが肺炎です。

肺炎高齢者は心臓病や慢性肺疾患のほか糖尿病や慢性腎不全などを合併していることが多く、肺炎をおこすと死亡率が高いことが知られています。咳や胸の痛み、発熱や白血球増加などの典型的な臨床像が高齢者ではみられないことがあるため治療開始が遅れることもあります。

高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎です。加齢とともに咳をすることが少なくなり飲み込む力が低下することで、唾液とともに口の中やのどに定着している細菌を肺に誤燕することが原因です。肺炎球菌性肺炎が多く肺炎球菌ワクチンの接種で予防することが望まれます。

なお昨年流行したマイコプラズマ肺炎は子どもや若年成人に多くみられ、65歳以上の高齢者ではまれです。

高齢者で忘れてはいけないのが肺結核です。平成27年は18000人程度の新規登録患者数があり、そのうち60歳以上が70%以上を占めています。加齢により免疫機能が低下することで発症すると考えられています。高齢者では咳や痰などの呼吸器症状がみられず、食欲低下や体重減少などの全身症状で医療機関を受診することもしばしばみられます。非高齢者と比較して診断が遅れ、重症となってから治療が開始されることも少なくありません。早期に発見して治療することが重要で、周囲への感染を防ぐことにもなります。

インフルエンザも高齢者では注意が必要です。急性心不全を合併したり、インフルエンザ後に肺炎球菌性肺炎をおこしたりすることがあります。最近の報告では冬のインフルエンザワクチンの接種率は高齢者で6割、小児で6割、一般成人で3割で全体では4割程度でした。高齢者のいるご家庭では、冬を迎える前に家族みんなでインフルエンザワクチンを接種することが高齢者を守るために有効と考えられます。